香住鶴の酒造り

アルコールを生成する優良な清酒酵母を純粋に大量に育成した培養体を”酒母(しゅぼ)又は酛(もと)”といいます。香住鶴では、その酒母づくりにこだわり乳酸菌より乳酸を生成させ酵母を育て上げる伝統的手法「生酛(きもと)、山廃酛(やまはいもと)」にて酒造りをおこなっています。

なぜ?米から日本酒(アルコール)ができるのか

酒造りに最も必要なのは、米の中心部にあるデンプン質で外層部にあるタンパク質や脂肪は酒の香味や色沢を劣化させる為、精米をして削り取ります。どれだけ精米するかは酒の種類によって異なります。(下部参照)
発酵とは、酵母菌が糖分(ブドウ糖)を食べてアルコールと炭酸ガスを出すことですが、日本酒の原料である米には糖分が含まれていません。そこで麹菌が活躍します。

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造り手

但馬杜氏

杜氏とは酒造り技術者の最高責任者。但馬杜氏は日本四大杜氏の一つ。美方郡を中心とした兵庫県北部が但馬杜氏のふるさと。この辺りは冬期の積雪が多く農業を行えないため、古くから出稼ぎとして酒造業に携わる者が多かった地域です。杜氏数は南部杜氏、越後杜氏に次いで多数。明治44年に組合を発足し、酒造界の発展と伝統の継承に努めています。

香住鶴では但馬流生酛造り、但馬流山廃仕込などを用いて但馬杜氏ならではの伝統的手法を継承しています。

 

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香住鶴社長と杜氏、蔵人

蔵人

杜氏のもとで酒造りを行う職人。作業の役職によりさまざまな呼び名がある。
・頭(かしら)
杜氏の補佐役。実際の作業の指揮を行う

・代師(だいし)
麹造りの責任者

・もと廻り、もと屋
酒母(酛)造りの責任者

・釜屋(かまや)
米洗いから蒸しまでの作業の責任者

・船頭(せんどう)
出来上がった醪をしぼる責任者

等の呼び名がある

原料(米・水)

酒造用として使用される原料米には、水稲うるち米(一般米)と醸造用玄米(酒造好適米)があります。

酒造好適米
・酒造好適米とは、山田錦、五百万石、雄町、兵庫北錦等、酒造に適したもので、その特徴は、心白、千粒重が大きく、タンパク質が少ないことです。

※千粒重とは、玄米の整粒1,000粒の重量のことで、酒造好適米は千粒重が大きく、大粒であるため、高度精白(米をたくさん磨く事)が容易です。その為、吟醸酒等の製造に適しています。

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当社では、蔵人達5名が酒米“兵庫北錦”を作っています。

香住鶴で使用している酒造好適米

・山田錦
日本で一番多く栽培されている酒造好適米。
優れた醸造特性を備え持ち、豊潤な酒ができると評判が高い。
吟醸酒用として特に人気がある。
昭和11年品種登録。
全国の生産量の8割を兵庫県が占めている。
三木市・加東市の一部地域では昔から良質な山田錦ができる場所があり特A地区とよばれている

・五百万石
新潟県で育成された品種、日本で二番目に多く栽培されている酒造好適米。
酒質はきれいで端麗なものとなる。
昭和31年品種登録。
新潟県、北陸地方などで多く栽培されている。
兵庫県では豊岡市が西日本での一大産地。

・兵庫北錦
兵庫県の酒米試験所で昭和61年に「なだひかり」と「五百万石」 を掛け合わせ開発された品種。
軟質米であり酒造好適米としては山田錦をも超える大粒で心白の発生もよい。
ふくらみのある酸味が特長のお酒ができる。
兵庫県の北部(美方郡新温泉町)が主要生産地。

原料(米・水)
自社生産米“兵庫北錦”

米の成分

1.炭水化物
大部分がデンプンでその含量は70~75%を占めています。デンプンは、醸造過程で麹菌が造りだすアミラーゼという糖化酵素により、ブドウ糖に分解されます。ブドウ糖は酵母によりアルコールと炭酸ガスに分解されます。

2.タンパク質
玄米中にタンパク質は7~8%含まれています。タンパク質は麹菌が造りだす酵素によってペプチド、アミノ酸に分解されます。アミノ酸は、清酒の旨味成分になりますが、酵母の死滅によるアミノ酸の増加は雑味と感じられます。

※ちなみに、デンプンは米の中心部、タンパク質や脂肪等は米の表層部に多く含まれる為、酒造りでは精米して使用します。

3.脂質
玄米に2%程度含まれています。多いと異臭や雑味の原因となるので精米で除去し、米を蒸す事で揮散させます。

4.灰分(ミネラル)
玄米に1%程度含まれています。微生物の活動に有用なカリウム、リン、マグネシウムが成分のほとんどを占めています。

5.ビタミン
胚芽部分に多く含まれており、麹菌や酵母の栄養源ともなりますが、酒造りでは微生物の発育が過度になる為精米して取り除きます。

精米歩合

酒造りに使う米は精米して使用します。
精米歩合と醸造アルコール使用の有無等により名称が異なります。

名称 使用原料 精米歩合
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示)
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示)
純米酒 米、米こうじ 規定なし
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下

※精米歩合60%とは、玄米の表層部から40%削り取った状態の事

仕込水

香住鶴では兵庫県最高峰(1510m)、氷ノ山(ひょうのせん)を源とし日本海に流れ込む清流 矢田川(やだがわ)と、その矢田川の支流である幸谷川(こうたにがわ)の地下50mより汲み上げた伏流水を仕込水として使用しています。
汲み上げられた清冽な地下水は1年を通して15℃前後を保っており真夏でもひんやりとしています。
軟水であり優れた醸造適正を備えもつ水です。

醸造アルコール

香住鶴で使用している醸造アルコールは米を発酵させ蒸留した、米アルコールを大吟醸酒、レギュラー酒に使用しています。通常のアルコールよりも香りが良く、旨味のあるまろやかな味わいです。

製麹(せいきく)

日本酒製造上、最も重要な仕事の一つ
麹の出来具合により日本酒の出来が決まると言っても過言ではありません。香住鶴では2つの製麹室を使う事で造るお酒の種類に合わせ最適な麹を造っています。

米麹の役割
1. 米のデンプン質を糖化してブドウ糖に変える
2. 米のタンパク質をアミノ酸(旨味成分)に変える

麹菌が米のデンプン質を糖分に変えます。その糖分を酵母が食べてアルコール発酵をするという事が、日本酒の発酵の仕組の中心部分です。

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大吟醸用の麹造りの風景

酒母(しゅぼ)

良い酒母(酛)とは

1. 優良酵母を純粋に多数培養したもの
2. 多量の乳酸を含有すること
→純粋な優良酵母が大事なのは、優良な酒質につながる為である

生酛(きもと)系酒母

生酛系酒母には、生酛と山廃酛があります。この酒母は自然界の乳酸菌や微生物を利用して清酒酵母を培養する日本酒の伝統的製法です。生酛系酒母で造られたお酒は重層的な味と押し味と呼ばれる生酛系特有の味わい(お酒中のペプチド含有量が多い)になり、さまざまな料理との相性が良くなります。

※生酛と山廃酛の違い
・生酛には、米の溶解、糖化を促進する為に酒母の仕込みに使用する米と米麹を櫂で適宜破砕する山卸(酛摺り)と呼ばれる作業があります。
・山廃酛には、山卸作業が無く(山卸作業を廃止して造った酛、略して山廃酛という)水麹や荒櫂をもって代行して造ります。

※生酛と山廃酛の歴史
生酛造りは江戸時代中期(今から300年ほど前)に完成した技法です。当時は足踏み精米や水車を使い精米を行っており、一番磨いた米でも90%程度だったと考えられています。その為、米が固く麹の糖化作用が働きにくい為、山卸を行う必要がありました。
山廃酛は明治42に開発されましたが、その頃、動力精米機が開発され現在のように米を白く磨く事が可能となりました。その為、米が柔らかくなり麹の糖化作用が働きやすくなった為、山卸を廃止した山廃酛が考案されました。

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山卸しの作業風景

速醸系酒母

速醸系酒母とは、仕込み時に適量の乳酸を加え乳酸酸性とし酵母以外の雑菌の繁殖を抑え、清酒酵母のみを純粋培養する簡易で再現性の高い製造方法で作られた酒母です。すっきりとした味わいの日本酒ができます。

酒母の種類

酒母は、乳酸をいかにして得るかによって2つに大別される
1.乳酸菌によって乳酸を生成させる生酛系酒母
2.既成の乳酸を添加する速醸系酒母

分類 種類 製造日数 乳酸 仕込操作 関与微生物
生酛系酒母 生酛 30日前後 乳酸菌発酵 繋雑 硝酸還元菌・乳酸菌・酵母
生酛系酒母 山廃酛 30日前後 乳酸菌発酵 繋雑 硝酸還元菌・乳酸菌・酵母
速醸系酒母 速醸酛 14日前後 市販乳酸を添加 簡単 酵母
速醸系酒母 高温糖化酛 8日前後 市販乳酸を添加 簡単 酵母

全量生酛系酒母(山廃酛・生酛)にて日本酒を製造

香住鶴では平成23酒造年度より製造数量の100%を熟練の技と手間暇のかかる全国的にも少なくなった伝統的な製法である生酛系酒母(山廃酛・生酛)にて日本酒を造っています。

酵母

酒母とは清酒造りに必要な、清酒酵母を大量に培養したものです。昔は蔵付き酵母が自然に増殖するのを待って酒母を造り、上手くできた酒母の一部を次の酒母に一部添加する(差し酛)を行っていましたが、現在では純粋培養された清酒酵母(きょうかい酵母)を添加する方法が一般的です。
(差し酛は繰り返し行うと清酒酵母の純度が落ち雑菌に汚染されやすい)

香住鶴では主に公益財団法人 日本醸造協会より頒布されているきょうかい酵母を使用しています。
香住鶴で主に使用しているきょうかい酵母
きょうかい701号酵母(K-701)/純米酒・レギュラー酒に使用
きょうかい901号酵母(K-901)/純米酒・吟醸酒に使用
きょうかい1901号酵母(KArg-1901)/吟醸酒に使用

醪(もろみ)・上槽(じょうそう)

並行複発酵(へいこうふくはっこう)

世界中の酒類製造の中でも最も複雑な発酵形式。
麹による米のデンプンの糖化と酵母によるアルコール発酵が、同じタンクの中で同時に行われる事により、20%もの高濃度のアルコールを生み出す事を可能としています。

醪管理

醪の管理の一番重要な点は温度であり、この温度管理で醪中での、糖化と発酵の強さをコントロールしています。

醪(もろみ)の仕込方法

醪の仕込み方法は三段仕込みで、1本の醪を4日間で三段階に分けて仕込みます。1日目に「初添」を仕込み、2日目は「踊り」と言って仕込みを休みます。3日目には「仲添」を仕込み、4日目に「留添」の仕込みを行って1本の仕込みが終わります。

1日目.初添
仕込みタンクに酒母(もと)を移し、水と麹と蒸米をを入れて、よく混ぜ合わせます。これを初添と言います。
初添は第2の酒母と言われ、酒母中の酵母の増殖をはかる必要があります。

2日目.踊り
初添を仕込んだ翌日は、仕込みを休み、酵母の増殖をはかります。これを踊りと言います。
踊りでの酵母の増殖は、その後の醪の発酵に大きな影響を与えますので、大変重要な1日となります。

3日目.仲添
踊りの翌日、初添の物料に水と麹と蒸米を入れて、混ぜ合わせます。これを仲添と言います。

4日目.留添
仲添の翌日、仲添の物料に水と麹と蒸米を入れて、混ぜ合わせます。これを留添と言います。

上槽

醪を酒と酒粕に分ける作業。通常は自動圧搾機にて搾る。

貯蔵・瓶詰

生酛(生もと)や山廃で造られたお酒は熟成させる事で、さらに旨味を引き出しまろやかな味わいにする事が可能です。香住鶴では生酒等を除く、全ての生酛(生もと)、山廃の商品において、半年~一年以上の熟成期間を持たせています。

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定温管理の貯蔵庫

日本酒用語(上槽後~瓶詰)

・無濾過
搾ったお酒を濾過せず瓶詰する酒。濃厚な味わいの清酒。

・生酒
搾ったお酒を火入れ(加熱殺菌処理)せず瓶詰した清酒。搾ったままの爽やかな風味の清酒。本生もしくは生生とも呼ぶ。

・生貯蔵酒
搾ったお酒を火入れしないで低温貯蔵し、出荷(主に瓶詰)時に火入れした清酒。

・生詰
搾ったお酒を火入れしてタンク貯蔵し、瓶詰時に火入れしない清酒。

・原酒
搾ったお酒を割水せず、そのまま瓶詰した清酒。アルコール度数が高くしっかりした味わいの清酒。

・しぼりたて
搾ったお酒を火入れ、貯蔵等をせず、すぐに瓶詰し出荷する清酒。

・ひやおろし
搾ったお酒を一度火入れし、夏の間ひんやりとした蔵で熟成させ、秋に二度目の火入れをせずに生詰した清酒。

・氷温貯蔵
氷点下の温度にて貯蔵する事。生酒の搾ったままの風味を残す事ができる。

Sake manufacturing process

1 Be particular about the rice

The first step in producing sake is rice farming. Our Kurodo workers cultivate rice paddy fields to produce suitable rice (Hyogo Kitanishiki) for making sake. Standards define that rice suitable for sake making has a large grain of 25g per 1000 grains. This rice contains less protein and fat. When our own rice production is not sufficient to meet demand, we source other first grade grains which have passed strict inspections. Being particular about each rice grain is the key to making great sake.

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In our company, Four court officials make liquor rice "Hyogo KIita Nishiki."

2. Seimai or rice polishing

The brown rice is milled away to remove the bran, embryo and albumen. Seimai-buai measures the amount of rice remaining after polishing. Proteins and fats are in the outer layers of the rice grains. They influence the quality of the sake and are removed slowly and carefully so as to avoid crushing the rice grains during polishing. This gives sake a more delicate taste. On the other hand, a high value of Seimai-buai makes it difficult to bring out the rice brand’s unique characteristics and requires additional processing in later stages of sake brewing. Milling also removes minerals and vitamins that promote fermentation, requiring higher technologies at later stages in the production process.

Sake manufacturing process
Own company rice "Hyogo KIita Nishiki."

Flow

Sake preparation step 1

Next the polished rice is washed. The water used for the entire sake making processes must be potable and should contain many microorganisms and minerals. We use water sourced underground, drawn from a 50 meter deep well near the Yada river. Keeping this water at 15 degrees Celsius at all times is critical to making our Kasumitsuru sake so great. We are indeed fortunate to live in Tajima.
Polishing reduces the rice’s moisture content to approximately 10%, so the rice must be stored for about one month to regain a 15% moisture content. This timing is determined by the Toji or the chief brewer and their broad experience and skill. This moisture content adjustment impacts the next process of steaming rice or Mushimai.
Because rice harvests are different each year, the moisture content adjustments also vary. The Toji is responsible for managing these variances.

The moisture-content-adjusted sakamai or rice used for making sake is steamed at 100 degrees Celsius.

Making koji (malt): The three important preparation steps are malting, Moto and preparation. Malt microbes are sprinkled onto the steamed rice. Rice starch changes to glucose by the enzymatic saccharification of the malt microbes. Malt production continues for 48 hours with hands, maintaining ideal temperature and moisture content throughout, and making sure microbes will not be over-produced.
Making the koji for Daiginjo (see note below) is especially hard work. For the Toji, this is an exhausting week without sleep and the highlight of this highly skilled profession.

 

Note:
Daiginjo represents the highest quality in sake making. To classify as Daiginjo, a minimum of 50% of the outer rice layers must be polished away and less than 10% by weight of alcohol can be added. Also the ginjo making process or Moromi, takes 25 days or longer at low temperature to qualify as Daiginjo.

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Flow

Kimoto making process

The primary ingredients of Shubo (see below), namely malt, steamed rice and water, are put into a wooden tank. The Toji is stirring and crushing the steamed rice carefully by wooden paddles. This process is called Yamaoroshi. This process is very time consuming and requires a high degree of skill. Our company has been conducting this traditional process for long time. We are proud to affirm that our product Kasumitsuru is made at one of the very few sake breweries that continue to use Kimoto method.

 

Note:
Shubo is made by Mushimai or steamed rice with malt added. It is the base of Moromi for Japanese sake, also known as Moto.

Flow

Sake preparation step 2

Shubo, water, malt and steamed rice are put together in three steps. The temperature and amounts of each ingredients are adjusted throughout. During these steps, saccharification and alcohol fermentation proceed and the temperature is kept at 15 degrees Celsius by the sixth day. Meanwhile, the Moromi (see note below) is analyzed frequently to monitor the progress of the sake making processes. About 20 days after shikomi or preparation, the sake and sake lees are separated by squeezing the unrefined sake through a large machine. Genshu or unrefined sake is stored in a cool cellar and allowed to mature. Taste testing determines when products are ready to be delivered.

 

Note:
The staged combination of steamed rice, koji malt, water and Shubo is called Moromi. When fermentation is complete, a brand new batch of sake is ready.

Flow

These are the basic steps in making sake. Each stage in the process relies on the Toji’s skills and experience to produce an outstanding product.